意外なことに、イェール大学やパリ・デンマーク・ベルギーでの研究によると、ベジタリアンはノン-ベジタリアンに比べ
約2倍の筋持久力、疲労回復力をもっていたと報告されています。
ベジタリアンのスポーツ選手で世界チャンピオン(マラソン、水泳、トライアスロン、クロスカントリー、ベンチプレス、陸上、空手など)も多く存在します。
また、ベルツ医師*の行った、車夫に人力車を引かせてスタミナを計る実験も知られています。これによると、穀菜食(白米、大麦、芋、粟)の場合は一日40km走を3週間異常なく行え、体重の減少すらありませんでしたが、穀菜を減らし牛肉を食べさせた場合3日目で疲労を訴えました(その後食事を戻すと、再び回復しました)。
*ベルツ医師:明治9〜38年に東京帝国大学医学部教授として日本に滞在。皇室の侍医でもあり、日本近代医学の父と称された。
アメリカの大学での、腕を伸ばしたまま支える実験では、15分以上行えたのは肉食者群では2/15人、菜食者では23/32人(このうち1時間以上は9人、3時間1人)でした。
スクワット運動では肉食者は300回、菜食者は1,800回、2,400回、ある人は5,000回行ったということです。
上記アメリカの実験の被験者は訓練を受けていない一般人ということです。次項にスタミナをより多く付けるための方法を記しますが、被験者が必ずしもこれを行っていたとは限りません。
そのため、ベジタリアンは何らかのしくみでスタミナがより持続し易いような身体になっていると思われます。
スタミナのもとは何でしょう?
■エネルギー源は何?
スタミナとは、エネルギーを長時間持続して生産・供給できる能力です。エネルギー源は、体内の
「糖質」と「脂肪」の二つです。
- 脳:「糖質」をエネルギー源にします。
- 筋肉:「糖質」と「脂肪」をエネルギー源にします。
■糖質について
◆スタミナ源のメインはグリコーゲン
食事で摂った糖質(米、芋など)は肝臓で「ブドウ糖」に変えられ、体内でエネルギー源として使われます。余っているブドウ糖は「グリコーゲン」という形で肝臓や筋肉に蓄えられます。この
貯蔵された「グリコーゲン」がメインのスタミナ源になります。
頭や体を使い続け、肝臓や筋肉に蓄えられた「グリコーゲン」が枯渇してしまうと、脳や筋肉が動かせなくなってしまいます。これが「バテ」の状態です。
「グリコーゲン」の貯蔵できる量は通常成人300g程度で、これは生命維持の必要最低量に過ぎません。そのため後述のように、スポーツ選手はこの蓄積量を増やす工夫を行います。
しかし糖質のみをエネルギー源とすると限界があり、さらに身体にダメージも与えがちです。脂肪もよく利用しなければなりません。
◆糖質の摂り方
糖質は大事なエネルギー源ですが、
糖質をむやみに摂ればよいのではありません。
一時に大量の糖質を摂ると、かえってスタミナ切れを起こしたり(過剰に分泌されるインシュリンが脂肪のエネルギー変換を阻害します)、糖質依存になったり(脂肪より糖分の方が容易にエネルギー変換できるため、いつも糖質が多い食事をしていると、身体は糖質のみをエネルギー源にしようとします。そうすると脳や筋肉は糖質を奪い合うように使い出し、スタミナ切れやイライラを生みます。また脂肪は使われず、肥満していきます)して、健康に良くありません。
すなわち糖質は、
数度に分けて穀物、豆類、野菜、果物などいろいろな食材から摂った方が良いのです。
ご飯やパンを大量に摂るのは良くありません。
また蔗糖(砂糖)、果糖、ブドウ糖など「単純糖類」は、運動後の補給以外にはなるべく摂らないようにします。
糖質が欠乏すると、身体は筋肉のタンパク質を分解して糖質を作ろうとしますので、運動後は速やかな補給が必要です。
◆糖質の利用を高める
鍛えられた筋肉はより多くの「グリコーゲン」を貯蔵できます。かつ、運動直後はグリコーゲンが欠乏し身体がより多くの「グリコーゲン」を蓄積しようとするので、できれば運動後15分以内に糖質を摂るようにします。即ち、
食事前に軽い運動を積極的に行うと良いです。
※プロのスポーツ選手は「グリコーゲンローディング」と呼ばれる厳しい食事法を行います。これは、試合の6日前〜3日前に体内のグリコーゲンを枯渇させ(糖質摂取を制限し激しいトレーニングを行う)、次に直前の3日間に糖質の多い食事を摂って筋グリコーゲンの合成を高めるという方法です。筋肉中のグリコーゲンは2〜3倍に増加し、肝グリコーゲンは約2倍に増加します。
糖質と一緒に
柑橘類、梅干、酢など(クエン酸)を一緒に摂ると「グリコーゲン」の合成が促進されます。
ビタミンB1を摂ります。ビタミンB1は糖質からエネルギーを産生します。
胚芽米・胚芽パン、大豆・大豆製品、ジャガイモ、ほうれん草に多く含まれます。ただし、ビタミンB1が体内でよく働くためには「マグネシウム」が必要です。「マグネシウム」を多く含む
昆布、カシューナッツ 、アーモンド 、豆腐なども一緒に摂りましょう。
ビタミンB2を摂ります。糖質・脂質・タンパク質からエネルギーを産生します。
納豆・牛乳・卵に多く含まれます。
※ビタミンB群は「水溶性ビタミン」で、体内に貯蔵が出来ないため毎日欠かさず摂らなければなりません。
■「脂肪」について
◆脂肪も重要なエネルギー源
糖質が枯渇した後は脂肪がエネルギー源として使われます。といっても安静時でもエネルギーの6割は脂肪によるもので、疲労回復も脂肪がなければ行えません。
糖質ばかりの食事だとスタミナは食後1〜2時間しか続きませんが、脂肪がある程度多い食事を摂ると、腹持ちがよく、スタミナが長時間持続します。これは、血糖値が一定のレベルを保ちながら、血中にある脂肪が酵素分解され脂肪酸となり、そのままエネルギー源となるからです。
体内の
脂肪は糖質の数十倍ものエネルギーを蓄えることができます。とはいえ脂肪だけでは効率よくエネルギーを作れず、ある程度の糖質が必要になります。
脂肪の燃焼には酸素が必要となるため、貧血にならないよう鉄分の補給も大切です。
◆脂肪の摂り方
脂肪酸には次のようなものがあります。多すぎず少なすぎず、満遍なく摂るだけでなく、それぞれをバランスよく摂ることが重要です。(太字は必須脂肪酸)
┌飽和脂肪酸
脂肪酸┤
│ ┌一価不飽和脂肪酸
└不飽和脂肪酸┤ ┌オメガ3系
└多価不飽和脂肪酸┤
└オメガ6系
普通の食事の中で、自然にオメガ6系(リノール酸)などは充分摂取できています。そのためバランスをとる目安として、「目に見える」油脂を管理しましょう。
⇒ 一価不飽和脂肪酸(
オリーブ油)と
オメガ3系(
しそ油、亜麻仁油)を意識的に多めに。
⇒ 飽和脂肪酸(
バターなど)と
オメガ6系(
サラダ油、紅花油など)は控えめに。
動物性の脂肪の摂取はあまり健康に良くありません。動物性の脂肪は動物の体内では液体ですが、動物の体温は人間より高い(牛脂、羊脂の融点は40〜50℃、豚脂は28〜48℃)ため、人間の体内では固まりやすく、食後数時間で血液の粘度が高くなります。血流が悪くなり、酸素や栄養素の供給や老廃物の代謝が悪くなり、疲労感が出たりだるくなったりします。
植物油は常温で液体の「不飽和脂肪酸」です。
※例外的にココナッツオイルは固体の「飽和脂肪酸」ですが、動物性のものと異なる無害な「中間鎖型のコレステロール」です。
また
マーガリン、ショートニングはあまり好ましくありません(人工的な「トランス脂肪酸」。ガンの原因にもなると言われます)。また「植物性」と明記していないショートニングは、原料に魚油を使用している場合があります。
◆エアロビック運動で脂肪をエネルギー源にする
しかし、高脂肪の食事をすればスタミナが付くのではありません。身体が、やや利用しにくい脂肪を主要なエネルギー源としてくれなければ肥満する一方です。そこで脚光を浴びているのが
「マフェトン理論」です。
この理論は、身体の
「エアロビック筋」を鍛えると、脂肪をエネルギー源とする体内システムが出来上がり、長時間スタミナを維持できるというものです。
身体の筋肉には、糖質をエネルギー源として動く速筋線維(赤筋=アネロビック筋。無酸素運動する筋肉)と脂肪をエネルギー源として動く遅筋線維(白筋=エアロビック筋。有酸素運動する筋肉)があります。
エアロビック・トレーニングの概要は、まず
ゆっくり充分なウォームアップを行って身体の隅々の毛細血管まで血液を循環させます。これによって、貯蔵脂肪が血中に流れ出し、脂肪酸の筋肉への取り込みが進みます。そしてトレーニングでは
心拍数を一定にキープさせることでエアロビック筋を活動させていきます。最後に
充分時間をかけてクーリングダウンを行います。
■その他のスタミナのつく食品
バナナは長時間エネルギーを供給してくれるためスポーツ選手にも愛用されています。
滋養強壮に良いのは
アスパラガス(アスパラガスのアスパラギン酸はドリンク剤にも使われている)。
「山のうなぎ」と言われる
山芋や
オクラは、糖質分解酵素アミラーゼや、整腸してタンパク質吸収を良くするムチンを含みエネルギー利用効率を高めます。
もちろんこの他に、身体を作るタンパク質やカルシウム、発汗で失われる電解質を摂ることも大事です。
■スポーツ時の栄養補給
スポーツ時の栄養補給の一例を記します。
◆運動直前
フルクトース(果糖:蜂蜜、梨、りんご、いちごなど)をクエン酸(柑橘類や梅干など)と一緒に摂取する。
例:
はちみつ+レモン。
◆運動中
分岐鎖アミノ酸(筋肉が吸収するアミノ酸、
スポーツドリンクにも配合されている)を投与すると持久性が上がる。
◆運動後
すみやかに
糖質を摂取する。