ベジタリアン情報ページ
ベジタリアンとは?
味覚機能
1) おいしいという機能
 食品の第2次機能は「味覚機能」(美味しさ)です。食べると美味しい、幸せになる、人生が豊かになる体験をさせてくれます。食事がまずくて食欲を減退させるものだったら、栄養素不足になってしまいます。  
 美味しいため、私たちは生体に不可欠な栄養素を積極的に取り入れます。特に3大栄養素のたん白質、炭水化物、脂質は美味しさに富んでいます。また美味しく温かい食卓は、家族や友人などお互いの親睦を深める、根源的な愛情交流のベースでもあります。  
 以下、ベジタリアン料理の美味しさについて考えてみます。
2) ベジタリアン料理の美味しさ
ベジタリアン料理が与える満足感には次のようなものがあります。
うまみ「軽軟・浄潔・如法作」油脂芳醇なフレーバー至福感


■うまみ

うまみとは
うまみの伝統
うまみは、甘味、酸味、苦味、塩味のどれにも属さない独特な味です。うまみは東アジアの食文化には欠かせない味で、伝統的に発酵調味料「醤(ジャン)」も使われてきました。日本では味噌、醤油、だし、塩辛、がに漬け、ショッツルなどですね。科学的に初めてうまみ物質をつきとめたのも同じ東アジアの日本人でした。西洋では「スープストック」(フォンやブイヤベース)でうまみを出します。
うまみ=アミノ酸、核酸
うまみの素はアミノ酸や核酸などです。アミノ酸はたん白質の構成要素で、核酸はエネルギーを蓄える「ATP」が分解された物質です。生体がそれらを欲するため、「美味しい」と感じられるのだと考えられています。
ちなみに、ライオンが獲物の内臓から食べ始めるのは、以下の理由からだそうです。
「野生のライオンはまず、捕らえた獲物の膵臓、小腸や肝臓などを食べます。これらの臓器には、筋肉の部分にくらべてたくさんのアミノ酸が含まれているのでおいしいのです。ライオンが去って2〜3日経つとハイエナなど他の動物たちが獲物の筋肉の部分を食べにやってきます。ちょうどこのころ、筋肉のたん白質の分解がすすんでアミノ酸や核酸が増え、肉が一段とおいしくなるのです。また、私たちが食べるお刺身も、あまり新鮮すぎるとかえって味がよくないと言われることがあります。これも同様の理由です。魚はしめてから12〜24時間経ったころにアミノ酸や核酸が増え、うま味がピークになるのです。」(「アミノ酸大研究」)

うまみ要素は現在30種類ほど知られています。そのうち代表的なのが次の3つです。
  • 「グルタミン酸」:昆布、チーズ、味噌、醤油、トマトなどのうまみ
  • 「グアニル酸」:しいたけ、えのきだけ、豚・牛・鶏肉などのうまみ
  • 「イノシン酸」:煮干、鰹節、あじ、さんま、豚・牛、えびなどのうまみ
うまみを出す
野菜のうまみはグルタミン酸系あるいはグアニル酸系のものが主です。肉・魚特有のうまみ(イノシン酸ナトリウム系)は海苔や酵母などには含まれるためこれらを使うと味の幅が広がります。
◎だし
精進料理で使う「精進だし」は、昆布、干し椎茸、わかめ、かんぴょう、煎り大豆、にんじん、切り干し大根などで作ります。
トマト、白菜、もやし、マッシュルームなどからもおいしいだしが取れます。
◎うまみの相乗効果
「グルタミン酸」「グアニル酸」「イノシン酸」と異なるうまみを組み合わせると「うまみの相乗効果」が起こり、うまみが飛躍的に膨らみます。なかでも昆布+椎茸の組み合わせが抜群です。
昆布のうま味成分「グルタミン酸ナトリウム」はアミノ酸系で、椎茸の「グアニル酸ナトリウム」および肉・魚の「イノシン酸ナトリウム」は核酸系です。
このアミノ酸系と核酸系が合わさると相乗効果が起きます。そのため、椎茸と肉・魚の組み合わせでは相乗効果は起きません。
◎調味料
味噌、醤油はそのものがうまみを含んでいます。
みりんは9種類もの糖が複雑に混ざり合い、奥深いうまみを出します。みりんのアルコール分は14%ですが、調理の際に煮立てるとアルコールは全て蒸発します(沸点は78.3℃)。
◎たん白質を分解
大豆たん白製品などをしょうがやパイナップル、キウイフルーツに漬けると、若干たん白質がアミノ酸に分解されて、柔らかくなりうまみも増します。納豆も発酵してうまみが出ています。
◎その他
海苔には様々なうまみ要素が含まれ、植物性食品には珍しく「イノシン酸」(肉、魚のうまみ)も若干含みます。魚もどきを作る際、魚の皮の代用にも用いられます。

■「軽軟・浄潔・如法作」
自然で奥深い味わい
軽軟(きょうなん)・浄潔(じょうけつ)・如法作(にょほうさ)とは、精進料理のバイブル『典座教訓(てんぞきょうくん)』(道元著)の中の言葉です。
藤井宗哲著「禅寺の食卓」によると、
  • 軽軟とは、ふっくらとして、なんともやわらかみがあって、それでいて心温まる。
  • 浄潔とは、清潔感があって、その食をいただき味わっているうちに、心の中が洗われるような清々しさがあること。
  • 如法作とは、理にかなったという意味で、「柳は緑、花は紅」というように当たり前に見たものをあれこれ小細工して歪めないこと。
言わんとしていることは納得できますね。
また中国は明の時代に書かれた人生訓『菜根譚』に
  • 「膿・肥・辛・甘は真味に非ず。真味は只是
という言葉があります。

■油脂
油脂の美味しさ
油脂は高カロリーで生体に非常に好ましいものであるため、消化管の細胞は油脂を認識すると興奮し、「おいしい」と感じられると考えられています。腹持ちが良いことも満足感をもたらす大きな要因です。
野菜には油脂がほとんど含まれていないため、油脂で香りとコクと栄養を上手にプラスしましょう。
※食肉の場合、鶏、豚、羊、牛の肉はそれぞれ異なる味がしますが、実は肉組織のうまみ成分にあまり違いはなく、その脂肪の違いが味の違いを左右しています。
植物油脂
精進料理ではごま(いりごま、すりごま、ねりごま、ごま油)が伝統的によく用いられます。豊かなコクと香りがあり、痛みにくく健康にもよく、重宝します。
イタリアのヘルシー料理にはオリーブオイルが使われます。
森のバターを呼ばれるアボカドは脂質に富み、すしネタでマグロの代わりによく使われます。ココナッツオイルもカレーなどに使われます。
てんぷら、揚げもの、炒めものはやはり注目を集めます。油あげも重要なアイテムです。
※もちろん、揚げ物など油の取り過ぎは身体によくありません。油を多用するベジタリアンはもちろん肥満します。
■芳醇なフレーバー

西アジアのスパイス文化
東アジアの「うまみ文化」対して、インドなど西アジアは「スパイス文化圏」です。塩味をベースに調理油や何十種類ものスパイスやハーブを使い、ボリュームと豊穣な風味を出します。
少量の素材でも、スパイスで調理すると奥深く大きな食べ応えを与えられます。
スパイスは食欲を増進させます。新陳代謝をよくし、脂肪の消費を助けます。抗酸化性作用で若さを保たせ、免疫力をアップさせます。また鎮静作用、強壮作用を持つものや内科的疾患などに効く成分を含むものもあります。
その芳香は精神にも作用し(脳から生理活性物質を分泌させる)、気分をリラックスさせたり至福感を与えるものもあります。
消臭作用や雑菌の繁殖を抑える作用もあります。
スパイス、ハーブを使う
インドやタイはベジタリアンが多いため、カレーを始め、さまざまなスパイシーレシピが豊富に揃っています。インド風、タイ風、メキシコ風など工夫してみるとバリエーションが広がります。
■至福感

セロトニン
「セロトニン」は脳をリラックスさせ、イライラを抑え、充実感、幸福感、自信、適度な睡眠、闘争性などをもたらす神経伝達物質です。
「セロトニン」は脳内で「トリプトファン」というアミノ酸から合成されます。「セロトニン」は痛みをやわらげる働きをし、ストレスを受けたびに消費されていきます。ストレスでやけ食いするのは、脳内の「セロトニン」が枯渇したためそれを補うための反応といわれています。

セロトニンの多く含まれる食材
「セロトニン」の原料である「トリプトファン」は肉に多く含まれますが、
牛乳やチーズなどの乳製品、卵黄、植物ではバナナ、海苔や高野豆腐、干し湯葉、きな粉、アーモンド、ピーナッツ、カボチャの種にも多く含まれています。
また同時に炭水化物(甘いもの)を摂ると、「トリプトファン」が体内で利用され易くなります。
そのほか、噛み応えがあるものを食べると食事の満足感が高まります。